2.無料で広告塔が置ける?

1999/03/16

 ある日、とある団体(以下・「団体A」とする)に「御社の宣伝ができる広告塔を無料で設置したい」という話が舞い込んできたそうだ。なんでもインターネットの技術を使ったシステムで、いろいろな事を宣伝できる、という物である。前項で書いたように、「タダで○○してやる」という話には別の意図があるに違いないのだが、そこの担当者はそこまで気が回らなかったようだったらしい。
 そしてトントン拍子に話が進み、団体Aに広告塔が設置された。それは熱帯魚の泳ぐ水槽の奥がディスプレイになっていて、そこに情報が表示される、というものだった。要はオートパイロットで定期的に画面を読みに行って表示するブラウザが常時表示されている、というわけである。
 その画面に団体Aの宣伝を載せられるのだ。しかし、ちょっと考えてみればわかるが、社屋の中の水槽にその会社の宣伝を載せたところで、宣伝効果は期待できない。しかも、画面に載せる宣伝の「掲載料」は無料らしいが、「コンテンツ制作料」は一つ作る毎に数千円取られるのだ。加えて、その広告塔の電気代・通信費はすべて広告塔を置く団体Aが負担するのだ。
 結果をまとめると、団体Aは、自団体を宣伝する広告塔を自分の社屋の中に置くのに、制作料を払ってやった上に、維持経費まで負担したのである。
 そして、広告塔の会社はその団体の最寄り駅で営業活動を行った。その地域ではそこそこ有名な団体Aが置いているのだから、そちらでもぜひ、というわけである。そして、その駅にも広告塔は設置された。この広告塔は、団体Aに設置されたものと違い、広く一般から宣伝画像を募集する、というものである。
 駅に設置された広告塔にも、団体Aの名前が大きく載っていた。こんな具合にである。
 「水中テレビにあなたの情報を載せませんか?  団体A」
 そして欄外に「お申し込みは制作会社・○○まで」と書いてあった。つまり、あたかも団体Aが作った広告システムであるかのように宣伝されていたのだ。おそらく、これで広告が取れても、団体Aに金が入る契約など、なされていないだろう。
 幸い(?)、素人目に見ても金を払っただけの効果があるものとは思えないものだったので、一般の申し込みはほとんどなく、したがって団体Aに苦情が来ることはなかった。だが、団体Aがこうむった迷惑は有形無形で多大なものがあったと言えよう。
 これはすべて、最初の「タダ」という言葉に安直に乗ったせいである。使い古された言葉だが、「タダより高いものはない」。

 追記・この会社は、このような宣伝手段を使い、一時期はかなり多くの駅に水槽を置いていた。しかし、このような舐めた商法がいつまでも通用する事はなく、ほどなくつぶれたようだ。
 ほとんどの駅で「水槽+広告」は撤去されたが、千葉駅では今でも水槽のみを置いている。その水槽を見るたびに、このインチキ商売の話を思い出す。
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