プロ野球合併問題

この10年の「球界改革」の成果

2004/07/19

 さて、現在の「球界改革」でも先頭に立って暴言・妄言を続けている読売オーナー氏。確かに、ここ10年ほど、プロ野球全体はこの人の言動によって左右された。しかし、それが球界全体にとって良かったとは到底思えない。
 逆指名権を認めた新ドラフト制度を導入した結果、有力選手の入団先が隔たるようになった。また、FA制度も同様だ。このFA自体は、補償を適切に行えればいい制度だと思うのだが、これと「逆指名ドラフト」が組み合わさった結果、あまりにも異常な「金があればあるほど有力選手を取れる」という制度が出来上がった。その結果、地上波で全試合中継という「多額の放映権料を貰って、球団の宣伝をしてもらえる」ために資金が豊富な読売に引きずられて年俸・契約金の水準が上昇。その結果、パ球団などはその人件費によって経営状態は悪化したわけだ。
 これらの一連の「制度改革」には、現読売オーナー氏の「要望を飲まねば新リーグ」などの恫喝が大いに影響を及ぼしている。

 ところが、この肝いりの「改革」は、意外にも効果が出なかった。当時の筆者も、この「改革」が実現した時は、読売の優勝確率は7割くらいいくのでは、と危惧していた。しかし、これはいい意味で予想が外れた。この10年での読売の優勝は4回、その前の10年が3回で、さらに前の10年で4回だから、新制度導入前とほとんど変わらない結果になった。
 と言っても、予想していたほど有力な選手が獲れなかったわけではない。ドラゴンズ落合選手・スワローズ広澤選手・ライオンズ清原選手・カープ江藤選手といった各チームの顔とも言うべき「四番打者」がことごとくFAで読売に入団した(参考サイト・プロ野球データ送信所)。他に外国人選手でも、今年のローズ選手、昨年のペタジーニ選手など、これまた「四番打者」を獲得している。また、「ドラフトの目玉」の大半は読売を逆指名し、ドラフト新制度の適用外の高校生ですら、相変わらず「読売以外には行かない」と言う選手が多い。
 しかしながら、プロアマ問わず実績のある選手を大量に獲得した割には、読売球団の成績は目立って良くならなかった。もちろん、その原因としては、長嶋監督(当時)の采配の拙さのような内的要因や、野村監督・古田捕手を擁したスワローズの、巧妙な試合運び+自由契約で獲得した選手を復活させた育成方法などがあるのだろう。しかし、それ以上に現場以外の所の問題として補強ポイントのずれと、無意味に球団に介入して強権を発動するオーナーの行動が挙げられるのではないだろうか。
 補強ポイントのずれと言うのは、先述した通り「四番ばかり取る」事だ。他球団の「四番ファースト」と「四番サード」を二人ずつ取る一方で、中継ぎ・抑えはいつも不足して困っている。
 そしてオーナー氏の感情的な発言・介入である。前年、チームを日本一に導いた監督に対し、「優勝が決まった後の消化試合の成績が悪ければ解任」などと言い、結果として辞任された(させた?)のが最近の顕著な例だろう。また、昨年シーズン中には、編成陣批判のつもりか「ダイエーには優秀な選手が入ってくるが、ウチにはペケやカスしか入らない」などと言った。仮に新人選手が期待はずれでも、シーズン中に言っていいセリフではない。それに実際には昨年の読売の新人選手は木佐貫投手が新人王を取るなど、活躍しているのだ。まあ、「たかが選手」という考えの持ち主だから、このような罵詈雑言が出るのも必然ではあるのだが。いずれにせよ、このような感情的な発言・行動は、チームの成績に悪影響を及ぼしても、役に立つ事はないだろう。

 いずれにせよ、読売球団はオーナー氏の強権のおかげで圧倒的な戦力を揃える事ができる状態になった。これまたオーナー氏やその部下による運営により、その戦力を生かせなかった。皮肉にも、自らの行動でバランスを取ったわけだ。いずれにせよ、そのような強権ぶりは、他球団のファンはもちろん、読売ファンにも不興を買った。その結果、視聴率、観客動員の実数とも下がる一方になった。
 一連の「一リーグ化」の動きも、結局のところは、「球団削減でより一層の有力選手を読売に収集」と「パリーグ球団との対戦による、観客動員・視聴率の増加」という。結局のところは読売球団の利益のみを考えた行動でしかないと筆者は思っている。そして、氏のこれまでの言動およびそれによってなされた結果は、球界全体にとっても読売球団単体にとってもマイナスになる事ばかりだった。
 そのような人が主導する「球界改革」がプロ野球にとって役立つとはとうてい思えない。実際、前回の発言からも分かるように、「一リーグ制」などと言っても、そのデメリットである日本シリーズ・オールスター消滅に対する具体的な方策は何も考えていない。ただ「削減・一リーグありき」というだけだ。

 余談だが、10年前の新制度導入前後の状況については、コアマガジン社の雑誌に連載されたまっとうスポーツというコラムに詳細が書いてある。当時の状況をもとに、10年後の現状をかなり的確に言い当てており、興味深い。