WPC EXPO 2003見物記
2003/09/25
 2003年9月中旬に行われた、コンピュータ関係の展示会の見物記です。

1.規模縮小
2.Lindows
3.OfficeSystem(2003)
4.雑感

 
1.規模縮小

 WPC EXPOは、奇数年には幕張メッセで、偶数年にはビッグサイトで行われる。したがって、今年は幕張メッセが会場だ。家から近いので、開催3日目の金曜日に1日休みを取っていくことにした。
 まず、事前情報をチェックするのだが、なんかこれまでにない物足りなさを感じた。展示にせよ、イベントにせよ、情報量が少ないのだ。さらに、開催後に配信された日経BP社のメルマガの情報量も少なかった。これまでだったら「事前情報が調べきれない」と思いながら当日を迎えるのだが、今回はそのような事はなかった。
 ちょっと違和感を覚えながら、幕張本郷のバスターミナルに行く。こちらに書いたように、歩道橋を降りる前にまず直通臨時バスの有無を確認する。しかしどうもそれらしいものが見当たらない。「一昨年はあったのに」と腑に落ちなかったが、定期バスで会場に向かった。
 一昨年はメイン会場の国際展示場の他に、隣接するイベントホールも会場として使っていた。しかし、今回はイベントホールの入口は閉ざされており、人の気配もない。「縮小したのかな」と思いながら会場に入る。一番西側の1ホールから入り、イベントを見ながら会場を歩く。そして6ホールまで行き、一番はずれの日経BP社のブースに行った。「これで一通りまわった」と思ったのと同時に違和感を覚えた。確か一昨年はこの壁の向こうでもイベントがあったはずだ。つまり7・8ホールは一昨年は使っていたのに今年は使っていないのだ。イベントホールもあわせれば、4割くらいの削減である。
 そう思って出展企業をふりかえってみると、「ウイルスバスター」のトレンドマイクロ・グループウェアのサイボウズ・CPUのAMDなどといった有名企業がいなかった。トレンドマイクロやサイボウズなどは儲かっているような印象があるのだが、そうでもないのだろうか。それとも費用対効果を検討した結果の出展見合わせなのだろうか。もしくは日経BP社の事情による規模縮小なのだろうか。いずれにせよ、一抹の寂しさを感じてしまった。
 
 
2.Lindows

 その中で、今回いちばん話題になったのは、LinuxにWindowsライクのGUIをつけたOS「Lindows」だろう。販売元は「エッジ」という会社。元は法人用のシステム会社みたいだが、最近、無料プロバイダーの「Livedoor」を買収したり、メールソフトの「ユードラ」の販売権を獲得するなど、コンシューマー向け事業に参入を開始したようだ。
 他社と比べると明らかに気合が違う。ブース内に竹林(「リン」ドウズにひっかけた?)を作り、コンパニオンの衣装も複数用意している。そして、「Lindows」の入ったパソコンを十数台展示して、自由に触れるようにしてある。
 そして、何よりも凄いのは販促グッズとして配りまくっていた、「タコ殴りうまい棒」だろう。うまい棒のイメージキャラの「灰色のドラえもんモドキ」がMicrosoftのCEOをモデルにしたようなお面を被り、「W」という文字を頭につけてリングに立っている。それを「L」という文字を頭につけたタコが「タコ殴り」にしているのだ。なかなか過激な意匠である。それにしても何故「うまい棒」なのだろうか。(参考画像※別窓で開きます)
 実際さわってみた「Lindows」は、確かにWindowsとほとんど変わらない画面だった。ブラウザは、ボタンから見るとモジラのようだ。また、MicrosoftOfficeと互換のStarSuite(OpenOfficeの製品版)も入っていた。
 ただ、さほどその画面に新鮮味は感じなかった。2年ほど前に、本の付録CD-ROMに入っていたRedHatLinuxをインストールした事があった。そのデスクトップ環境の「GNOME」というものは、Windowsに近い操作感覚をすでに備えていた。
 確かに、「Lindows」は「マイコンピュータ」「マイドキュメント」ができるなど、よりWindowsに近くなっている。しかし、「マイコンピュータ」を右クリックして「プロパティ」を見れば、システムの構成がわかる、という所までは「Windows」と同じではないようだ。
 また、この「Lindows」の売りの一つに、「年間9,800円を払うと、OSのカーネルからデジカメ画像管理ソフトまで、様々なLindows用アプリケーションを好きなだけインストールできる」というのがある。なかなか便利な仕組みだが、ちょっと9,800円は高いような気がしないでもない。
 あと、試しに「Lindows」パソコンで当サイトの「絵画館」を見てみたのだが、トップ画像(25kb)を表示している最中に固まってしまった。さすがにOSのせいとは思えないので、回線の遅さか、PCの性能が原因だろう。とはいえ、満を持して発表する以上、回線やPCはもっときちんとしたものを用意しておくべきだったように思える。少なくとも、竹林や「うまい棒」よりはそちらのほうに予算を使うべきだったのではなかろうか。
 というわけで、残念ながらやや期待はずれな「Lindows」の展示会だった。とはいえ、新規購入はもちろん、アップグレードにも高う金を取り、しかもセキュリティは穴だらけというWindowsに代替しうるOSというのはやはり必要だと筆者も考える。ぜひとも「LindowsプリインストールPC」が発売されるよう、頑張って欲しいものだ。

 
 
3.OfficeSystem(2003)

 十数メートル離れたブースで「タコ殴り」にされていた(?)Microsoftは、今秋発売のOfficeSystem(2003)を大々的に宣伝していた。はっきり言って、日常レベルで使う分には、Officeをアップグレードする必要は感じない。
 今回の新機能の一つとして宣伝されているものの一つに、「インフォパス」というものがある。XML対応のフォームを作る機能がある。開発者向けパッケージみたいなものに含まれているアプリで、一般ユーザーには全くもって関係ないものだ。
 他の新機能も「これは」と思うものは特になかった。三つの売りの一つがOutlookのレイアウトの変更とメールの整理機能が効率化だそうだ。しかし、そのへんがいくら便利に(?)なっても、Outlookをメール端末として使う気はおきない。特に、新機能の一つに「メールが届いたら、デスクトップに送信者・件名・本文のプレビューをポップアップする」などどいう機能を見た時は、「またこれがもとで新たなウイルスが発生しないのか?」とむしろ不安になった。動画メールの作成機能強化も同様だ。
 他に、携帯とのデータ連携機能もある。かつては非常に関心のある機能だったが、現在は筆者の持っている携帯の付属ソフトで実現済みなので今となっては意味のないものだ。あと、人物画から似顔絵を作るウイザードなどは面白いが、どちらかというと、オマケみたいな機能だ。
 三つの売りの二つ目はブロードバンド連携でオンラインからテンプレートを拾ってくる、という機能も便利だとは思う。ただ、これまででもOfficeに付随している大量のテンプレートのうち、1割程度しか使っていないので、これまたあまり関係ない。
 三つの売りの三つ目は日本独特の「Home Style+」というものである。これ自体はアプリではなく、各アプリに加えるような機能だ。先述した「似顔絵機能」もこれに含まれる。
 Outlookの他にも、Excelの関数作成支援と、Wordの文章作成支援などがある。そのうち、Wordのを試してみた。
 もっとも、これまでのWordにも、挨拶文と結び文の作成支援機能があった。要はその間の本文にもテンプレートができたわけだ。とりあえずウイザードを起動し、適当に選択肢を選びながら進む。すると、なぜか「今はなき上司の法事の挨拶文」などというものの作成画面になった。新製品の新機能にしては辛気臭い所にたどり着いたな、と思いながら、条件を入力していく。最後に「死んだ部長の姓名を入れろ」とあったので、新製品に敬意を表し(?)このソフトを作った会社のCEOの名前を入れてみた。おそらく、この機能を試用した多くの人は、筆者と同じ名前を入れただろう。
 確かに面白い機能でははある。だが、これなら10年以上前に買ったワープロ専用機にも、おまけとしてついていた。現在では、その会社はネットで無料で作るサービスも提供している。そう考えると、「新機能」としてはどうだか、という気がしないでもない。
 個人的には、今回の機能よりも先につけ足して欲しい機能はある。たとえば、「Wordを原稿用紙に書いたみたいに表示・印刷する」とか「Wordの中にExcelの表を張り込む時のサイズ調整」などだ。そのあたりは仕様の関係で難しいのだろうか。

 あと、昨年のMicrosoftのブースで大々的に宣伝していた「タブレットPC」だが、今年はほとんど見かけなかった。実際、この一年で話題にもならなかったし、Microsoftとしても関心を失ったのだろう。

 
 
4.雑感

 というわけで、「Lindows」はやや期待はずれで、「Office2003」は「予想通り」だった。とはいえ、それ以外では興味深い展示物がいろいろあった。
 IP電話のブースでは各プロバイダのIP電話をそれぞれ試せるようになっていた。とりあえず、長距離電話で使っている「フュージョン」のを使って自分の携帯にかけてみたが、普通の電話となんら変わらない音質だった。
 あと、主催の日経BP社のブースでは、「絵で覚えるプログラム言語学習ソフト」のようなものを売っていた。JAVAとC言語があるのだが、JAVAのほうは「パラッパラッパー」みたいな絵なのに対し、C言語はボーイズラブ系の絵なのだ。C言語を習得する気はないが、どんなストーリーが展開されるかには興味を持った。JAVAには関心があるので、絵が逆だったら絶対その場で買っていたのだが・・・。
 他にも、いろいろと興味深い展示を見ることができた。とはいえ、やはり、入場前から感じた「縮小傾向」が強く印象に残り、最後まで物寂しさを感じた一日だった。今後、日本の経済の先行きは相変わらず暗そうだが、ぜひともこの業界には頑張って、再来年はぜひまた、幕張メッセの全フロアを使ってこのイベントを行って欲しいものだ。

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