ヒカルの碁(ほったゆみ さん《作画−小畑健氏》)

2004/01/18

掲載・20世紀末から21世紀初頭の週刊少年ジャンプ
 読んでいるとキャラクター達の「強くなりたい」「より上に行きたい」という意思が強く伝わってくる作品。筆者は囲碁は打たず将棋を愛好しているが、この作品を読んで触発され、将棋の勉強を始めた事が何度もあった。
 しかも、その「強さ」の求め方が段階に応じて変わってくるところが上手い。囲碁部時代の「チームで勝利を目指すために」という姿勢、院生時代の「とにかくプロになりたい」という姿勢、プロになった後の「より高みを目指したい」という姿勢。そして同時に、藤原佐為・塔矢行洋といった、頂点を極めた棋士ならではの「神の一手」を目指す姿勢。原作者の実体験と豊富かつ綿密な取材の後を感じさせられる。

 また、話の展開の完成度もすごい。基本設定である「霊である藤原佐為に碁を教わる」という「SF」が、その霊の消失を経て、自然な流れでSF色を薄めている。しかしながら、終わった時に振り返っても「藤原佐為」というSFキャラの存在感は薄れていない。そのあたりの絶妙なバランスはなかなか真似できないのではないだろうか。もちろん、それを支えているのは、最初に書いたように時代・棋力を問わず共通している「向上心」の描き方の上手さによるものなのだろう。
 作品は、話の展開からみても、人気から見てもまだまだ何十巻も続けられそうなところで終了した。理由はわからないが、普通に見れば「不自然な終わり方」である。しかし、掲載誌の「週刊少年ジャンプ」のこれまでの実例を見ると、この終わり方もむしろ良かったのではないか、と思えてくる。
 そのあたりの、計算されていない結果も含め、結果的にはかなりの点において、きちんとまとまった。そう考えると、漫画の設定と同様、「元々優れた能力のあった素材に、SF的な偶然が重なって、その素質を最高の形で開花させた」作品と言えるだろう。

 ところで、これは蛇足に近いが、当初の題名が「九つの星」だったのを、「わかりにくい」という理由でこの題名に編集部が変えたそうだ。しかし、どう考えても前者のほうがいいと思う。だいたい、「ワンピース」などに比べればずっと解りやすい題名だと思うのだが。




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