にんじん畑

 幕張本郷は千葉市の西のはずれである。駅から10分も歩くと習志野市になる。さらに、幕張本郷の一つ隣の駅は習志野市の代表駅である津田沼である。したがって、大掛かりな買い物をするときは、千葉に出ずに津田沼で済ますことが多い。
 津田沼まで電車なら5分もかからない。しかし、休みの日などは散歩も兼ねて津田沼まで歩いて行くことも多い。
 幕張本郷から津田沼方面へ歩いてしばらくすると、道路の舗装状況が変わる。これは市境を越えた証みたいなものである。予算の関係なのか、習志野市のはずれの道路は舗装状況がひどく、ひび割れみたいなものまである。
 そのまましばらく行って線路を渡ると、いきなり畑作地帯になる。幕張本郷の方を振り返れば、そこは普通の住宅地である。さらに海のほうを遠く望めば「幕張新都心」に林立しているビルまで見える。しかしながら、筆者の立っている所は純然たる畑作地帯なのである。
 農繁期だと、手ぬぐいを顔に巻いた農家の人々が畑・畦を歩いている。時にはトラクターとすれ違うことすらある。畑で最もよく栽培されているのはにんじんだ。他にも、ねぎ・ナスといった野菜がいろいろ植わっている。田んぼはない。
 津田沼に行く場合、10分くらい畑の中を歩くことになる。季節によって、畑の風景は全然違ってくる。本当にここは住んでいるアパートから歩いて20分くらいのところなのか?と不思議に思えてくる。
 10分くらい歩くと、小さい団地がある。ここが畑作地帯の終点で、団地を越えると、再び住宅街になる。もちろん普通の住宅街で、ここを歩いていると、自宅から畑作地帯を通ってここまで来た事がまた不思議に思える。

 もともと筆者のアパートを含めたこの幕張本郷ならびに隣接する習志野市の一帯は、古くからこのような近郊農業の行われる所だったのだろう。それが首都圏の拡大にしたがって開発され、現在の姿になったと思われる。むしろ、畑のほうが本来の姿なのだ。
 千葉市としては新都心の玄関口である幕張本郷の開発を重視していたため、千葉市の部分の畑はほとんど潰されてしまったのだろう。しかし、隣接する習志野市の部分は。「市のはずれ」という認識のため、積極的な開発計画がたたなかったのだろう。そのおかげで畑が残ったのではないか?と筆者は推測している。
 いずれにせよ、津田沼に行く途中にあるこの畑作地帯は我々の貴重な散歩のオアシスとなっている。願わくば、このままずっと畑でありつづけてほしいものである。
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